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曽野綾子著、「人生の収穫」を読んで。
最初は良い本なのかと思って読み進め、なるほど人生のヒントになることも書かれているのかな?と思おうとするのですが、不思議なことに氏の文章はどうにも喉に引っ掛かり、素直に飲み込めぬところが多いことに気がつき、この一文を書こうと思い立ちました。
内容は、ご自分の体験も交えた現実主義者としての揺るがぬ姿勢から、”現代日本が抱える国家的脆弱さを、歯に衣着せぬ論調で一刀両断する”と言う、至って単純化された思想が明確で、なるほど正論なり。と感ずるファンも多いのは理解に難くない。 しかしながら、私が少々危険に感じたことは、その根拠がすこぶる全体主義的であり、階級主義的目線に立脚しているように読み取れることである。 故笹川良一氏の競艇ビジネスの頂点の椅子を手にしたことでもその思想はあくまでも国家主義的であり、戦後教育の否定であることはその著書の端々から見てとれます。 おふざけも甚だしいのは,我々の暮らしは常に「アフリカのことを思ったら上等」であるらしく、筍は「社長や部長より偉い」らしい、筍の例はどうでも良い、部長や課長が偉い。という旧態依然とした固定観念を敢えて引き合いに出し、狭い一社内での階級がまるで一般常識であるかのごとく書かれている不思議さ。である。 そして人間は「二人に同じ仕事をさせれば、どちらが有能か」すぐわかるのである。 さらに、自殺を考えている男を「ヒマワリ畑の真ん中に立たせたら」思い留まるのではないかと思う。のだ。これは家族に自殺者がいる家庭のひとが読んだら、なんとおぞましい思想であるのかと受け取られかねません。 しかも「人権という言葉ほど、貧しい感じがして嫌いなものはない」とまでいい放ってしまうのは、ご自分が人権を踏みにじられたことがない、それこそ貧しい心のお嬢様であることを告白しているようだ。文章の中にキリスト教の聖書からの引用が多いことは、興味のあるものにはとても勉強になりますが、氏の思想を強固なものにするべく引用するのなら単なる”利用”の域を出ていないのではないかと言う疑問が生じます。 すべての例え話の中に、ご自分の見識の高さや好きなことをしてこれた幸せの押し売りの調味料がまんべんなく振りかけてあります。 味覚に関しても「アフリカの貧しい国に3年も住んだ挙げ句」なら不味い機内食もにも感動できる、と想像していらっしゃるのだからこれはかなりのグルメか相当の俗物なのではないかと感じてしまいました。 いや、むしろ全体を通じて感じるのは、古い外国の物語にある、「泥水を踏みたくないばかりに、パンを泥水に投げ、その上を歩こうとする少女」のお話を想起させることです。もちろんこの少女には恐ろしい結末が待っています。 あと、何だか良くわからぬのは「今は皆単純な子供ばかり」の理由に「日教組」が出てくることである、私は教職員組合に関して一方的に批判するほどの知識も無く、戦後教育を否定するのにそれを出すのは恐らく愛国党の故赤尾敏党首辺りが始めたのではないかと思っていますが(右翼としてなら彼は最も正統派であったと私は思う)それをご自分の著書に敢えて一行書き足したい彼女は、彼女自身の表現によると一文字一文字原稿用紙を埋める肉体労働者なので、この主張にはかなり確固たる自信があるのであろう。 もう引喩は止めましょう。 私は、彼女の文章の中に表れる心の中の大きな大きな闇を見るのであり。その闇を根拠にした執筆活動の哀しさを感じてしまいました。昨今、彼女がいくつかの災害や3・11地震の被災地の人たちに関する思いやりのかけらも無い暴言や、なりふり構わない東電擁護で注目を浴びていることはむしろ当然だったのだろうと理解しました。 同じ暴言という受け止められ方で批判されていても、まだ何を言いたいのかが分かる橋下徹大阪市長とはまったく違う次元なのも、ある意味興味深く感じています。
by Detachment801
| 2013-06-22 19:23
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