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旧車 パトカー 街の写真、食べ歩きから不要情報までというブログでしたが2014年に横浜に転居直後に癌発症、その後転移が見られ、現在も療養中。そのため内容がクルマに限らず身近なエリアと話題主体になっています。
by Detachment801
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「帝劇ミュージカル パイレート・クイーン 」 と アイルランドの悲劇

先日、友人らと3名で観劇。

内容は、16世紀、英国の過酷な支配下に置かれるアイルランドで、イギリス軍に抵抗した実在の女海賊グレース・オマリーの果敢な愛と戦いを描いたブロードウェイ・ミュージカルの日本版。

と書くとかなり面白そうである。配役も人気の山口祐一郎、涼風真世などを揃え、主役の女海賊グレースを演じるのは私より二歳年下、数々のミュージカルで主要な役を務めたベテラン実力派の保坂知寿と手堅い。
しかし、前評判が芳しくない。ネットで見ても好意的な分はごくわずかという微妙さ、私の知人もかなり辛辣な評価、
しかし評判と言うものは悪ければ悪いでそれなりに見たくなるものだし、人気者の山口クンに対して私は憧れを持って見ているわけでもないのでたとえ多少滑稽でも幻滅が無いと言う利点もあります。

見て感じたことは、基本的にストーリー展開が弱いのだ、二人といない折角の波乱の生涯なのに、ドラマティックさに欠ける展開と言うのはなんとも勿体無い。わざわざストーリーを端折っておいて、なぜアイリッシュダンスに割くシーンがこんなにも多いのか?
話の途中でもパーカッションがドンドコかぶってカントリースタイルのフィドルが始まるとあら不思議、全員で踊りだしちまうのだ。(この音楽が舞台終了後も頭に残って困る)
おいおい話はどーするの?ってツッコミたくなるほどです、これが何度も何度も繰り返されるのだ。アイリッシュダンスが見たければアイリッシュダンスの公演に行けばよいのだ、このダンスが無かったらおそらく公演時間が半分になるであろう。。
ただしこのときに使う片手で持つ小型のドラムと、その手首を使い速いビートを片手で打ち鳴らす奏法ははじめて見たので、ちょっと興味深かった。

他にもエリザベス女王のメークが涼風真世には似合わぬメークで、どうにも不細工に見えてしまうのも残念だし、女王の侍女たちがなぜかみな日に焼けた農民のような顔立ちなのはわざとなのであろうか?と感じさせるほどで、新春スターかくし芸大会か、遊園地のアトラクションの域を出ていない。
だいたい全般に取り立てて美女がいないのもこの舞台を地味にしてるかも知れない、まぁほとんどのお客は女性なので、お目当ては山口クンだもんね。


その山口クンは今回も遺憾なく私が「寝違えた鉄人」と名付けた身のこなしを発揮していてなんともいえなかったです、スターウォーズの金色のロボットの動作にも似ていて、もちろんアイリッシュダンスには向いていないらしくあまり参加していないみたいでした。

肝心のラブストーリーの部分にも、愛し合う二人が引き裂かれ、グレースは望まぬ相手と部族同士の政略結婚をさせられてしまうという、最も重要な悲恋の部分があっさりと通り過ぎてしまったり、後半に、イギリスに捕えられた彼女を自分の身と引き換えに故郷へ帰す重要なシーンでも、あまりに彼らの心の描写がおざなりなのだ、これは脚本がまずいよ、ってあまりこういう関係に詳しくない私でもわかりました。

グレースの保坂さんは時々野々村誠の嫁に見えるし、エリザベス女王を取り込もうと画策するビンガム卿はなんだか志村バカ殿の家老桑野信義を思わせる芝居をするし、切ない恋物語には全くなっていないのがこの手のミュージカルとしては致命的だと思う。
「帝劇ミュージカル パイレート・クイーン 」 と アイルランドの悲劇_f0145372_285286.jpg



英国が隣国に対して残虐な支配を続けてきたことが伺えるシーンがあるのは同じようなことをしてきた日本にも似ていると感じました、抵抗を続けてきたグレースに対しても結局はアイルランドが英国の支配下であることを認め、アイルランド人が英国女王の臣民である限りその尊厳を認める、という上から目線の慈悲であり、対等な立場では見ていない支配者の論理に過ぎなかった。
現実に英国はその後400年にわたりアイルランドを植民地支配し続け、常に軍隊を送り込み、工業や産業も発展しないようにコントロールしてきたのですから恐ろしい話です。

これは歴史上の話ではなく1922年にそのほとんどが独立を果たした後も現在も北アイルランドだけは英国の支配下であり、抵抗運動も存続しています。現代では海賊などというある意味優雅なものではなく、IRAと言う過激派となり、市民をも巻き込んだテロがその抵抗運動の根幹で、非常に悲惨な結果を招いています。
イギリスも抵抗運動を容赦なく弾圧し、1972年にはアイルランドの平和運動デモ隊に英軍が発砲、13名を虐殺する事件もおき、元ザ・ビートルズのポール・マッカートニーは「アイルランドはアイルランド人に返せ」という歌を作り、即座に放送禁止処分になるというおまけまでついたのだった。

きっとグレース・オマリーの魂はいまも安らかではないのかもしれませんね。
by Detachment801 | 2009-12-16 02:09
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