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姜尚中:トーキョー・ストレンジャーTVの情報番組などのコメンテーターとしていつも冷静で的確な意見に感心させられる姜教授の、東京という街を背景に、さまざまな思いを書いたエッセイ。 自分探し、アイデンティティの確立、本当の自分、こういったものを求めている人は多いと思います。まして、日本という国に生まれ育った、大韓民国国籍を持つ「永野鉄男」として暮らしていた氏は、「偽りの」生き方をしていると他の同国人に指摘されるなど、さまざまな問題を抱え、当然本当の自分は別にあると考えていたわけです。 その後、自信のない自分が自分自身を狭い路地に追い込み、強そうに見えて、世界が見えていない、他者が入り込む隙間もないにわかナショナリズムに向かったとも語ります。 これは、まさに今の日本が抱える問題に似ています。今のある種の日本人のように、自信を失った人間は、他者をターゲットとして誹謗、蔑視、攻撃することにより、相対的に強い自分を手に入れたと錯覚するわけです。 毎日ネット上に繰り広げられる激しい中国人、韓国人を主なターゲットとしたアジア人差別の根はここにあるわけで、後で書く「複数性」をあえて無視していることに大きな要因があったと私も気づかされて目が覚めた気がします。 しかし、本当の自分と言うのはいくつもある、アイデンティティというのはいくつもの面を持っている、「私」にも「日本」にも「韓国」にもいくつもの顔がある、そういった複数性に気がつき、受け入れ、いくつもの自分を発見していく積極的許容により自分の可能性に気づき、自由になる。と語る氏が、他者と出会い、交じり合い、自分に目覚めることが出来る、「異邦人が生きる場所」を「都市」だと定義しています。 その姜教授が大都市トーキョーに住み、トーキョーを歩き、トーキョーについて雑誌に連載したものをまとめた本がこの「トーキョー・ストレンジャー」というわけです。 姜尚中(かん さんじゅん)氏は1950年熊本生まれ、早稲田大学大学院政治学研究科博士課程卒、現在東大大学院教授、この私より10歳年長の素晴らしい頭脳を持つ在日韓国人二世の言葉はすべての迷えるひとにしみ込むと思います。
by Detachment801
| 2011-08-10 04:42
| 韓国・朝鮮文化
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